手紙

灰皿で燃える手紙の火を見やり 今日の晩飯 カレーライス

虚構

ろんりねす ろんりねす とか 歌うように 音楽みたいに 言葉が在れば

虚構

指先で 音を聞く夜 割れる夜 日の出は虚構だ エエカッコすんなや

てぶくろ

愛しいとつぶやけ 冬は群盲の 象撫でる手を覆うてぶくろ

正月

「チャーハンも作れる、キャベツの千切りも」 親にキャラづくりの正月

ふるえ

コーヒーと紅茶があれば寒くない ふるえの止まらぬ振動パッド

除雪車

まだいける! 否、諦めたまえチャリ通勤 眠れぬ夜に除雪車の叱咤

大海の泡を喰らって蒼き空 雪降りつもる記憶の庭よ

タイムカード

給料日二十日前の心境をタイムカードに記そうか“夢死”

抱き合ったままの死骸を瓶に詰め 桃源郷へ垂らす毒薬

ガンガンガン カンカンガンガン カンカンカン 何の音だよ朝っぱらから

瞬間

チャーハンのチャーハンになるその瞬間をフライパンに委ねるのか君

ゆらゆら

なぜ子供たちが笑わないの? ゆらゆらと時間の波が見える場所だから?

ジン

ジン飲んでる俺を見るCDジャケットの 長い顔だな トッドラングレン

意味

意味よりも無意味を求める枯れた指 いますぐ死ねるか闇に咲く花

戯言

身体のレベルが一段あがるよう 戯言耳にし呑まれるよ(酒に)

短歌

5・7・5・7・7じゃ無理 形式を重んずるには汚れたクチバシ

便所

一抹の 寂しさ感じ 振り返り 流るる汚水に 「もう午前四時かよ」

なにひとつ わからぬ小上がり 不意に蟹 「日本酒熱燗、もひとつください」